2013年3月29日金曜日

1−6.「ニセコ観光局」の誘致受入活動における対象細分化戦略


1)誘致受入活動における対象細分化の戦略的位置付け
 多様な地域個性によって成り立つニセコは、リゾート戦略においても多様化を内包することによって、誘致受入において顧客(来訪客)に多様な選択を提供することができる。これは、全体として組み合わせられれば大きな優位性となるが、これまでは全体としての誘致受入戦略が不在であったことから、ニセコの印象も実際の受入環境もバラバラなものにとどまり、国際リゾートの資質としては大きな欠点となっていた。そこで、ニセコを統一した仕組みのなかで誘致活動し客を受入れていく上で、多様性を許容した統一性をどのように戦略化するか、大きな課題となっていた。
 この課題に応えるために設立する「ニセコ観光局」は、多様な地域個性を多様な誘致受入戦略のなかに有機的に位置づけるため、顧客の対象細分化と対象絞り込み及び比較優位の位置取りを中心的な機能とする。

5:「マスタープラン」NPB 2009/「観光客満足度調査」ニセコ町2010/2011

 ①来訪客を有効に細分化する仕組みを組み込む
来訪者へのアンケート調査による対象細分化分析は、これまでも折々に実施されてきた(ニセコ町、NPB)が、今後も定期的に実施する必要がある。また、早急に施設とシステムの構築が求められている「総合案内窓口」や「オンライン予約受付」を利用する顧客のデータは、極めて有意性の高い分析データとなり、有効な活用が期待できる。

②来訪者データを基に、対象細分化、絞り込み、比較優位な位置取りを一貫して分析
 来訪者の属性や行動実態、評価意識などは、誘致受入活動における対象の細分化や絞り
 込み、訴求ポイントの構築などを行う上で極めて有意なデータとなる。

 ③地区の個性に応じた多様な誘致受入戦略を構築する
 受入環境の整備と、対外的なセールス誘致活動のどちらを優先課題とするのか、地区の
 個性と来訪客の実態を組合せて、戦略の選択が可能となる分析結果を提供する。また、
 受入環境整備、誘致活動のいずれにおいても、市場をさらに絞り込むことを可能にする。




2)対象細分化の手法
 来訪客の動態データと意識データは、総合案内窓口、オンライン予約受付、アンケート調査によって定期的に収集できる。この際に必要なデータ項目は、最終的な活用目的に合致する分析結果を想定すると、予め設定可能である。従来の類似調査においても有意な分析結果が得られているので、これらを参考にして調査項目を再検討し体系的に再構築することで、有意義な調査システムの構築が可能となる。右図に、その一連の調査分析活用の反映方法を示す。この一連の対象細分化分析に基づく流れは、ニセコ観光局が、戦略的な誘致受入活動を進める上で、最も中核の位置を占める機能である。

3)対象細分化分析でわかったこと

  • 外国人観光客満足度調査によると、ニセコの成功はリピーターを確保したことによるものであり、来訪時に高い満足度が得られたことが、再訪希望や紹介意向に結びついている。
  • 再訪希望や紹介意向により、顧客自身が誘致活動の実践主体となっているが、現状ではオーストラリアからの来訪客が中心で、欧米やアジアからの来訪客にはまだこの構造が定着していない。
  • したがって、出身国によって誘致活動の優先度は異なり、受入環境と対外誘致活動の優先度を変えることが可能である。
  • 満足度に与える影響度が大きいのは、パウダースノー、自然景観と街並、宿泊施設、食事、費用、情報となっている。

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