2013年3月29日金曜日

1−5.「ニセコ観光局」におけるガバナンス(共治)の位置付け


1)「ニセコ観光局」の業務全体におけるガバナンス(共治)機能の位置づけ

 ニセコ観光局の中核的機能であるガバナンス(共治)の役割は、地域資源の持続性を確保しつつその範囲内で地域産業が安定的に継続できるよう、リゾート施設の過剰供給などを制御することであり、地域開発の成長管理が主たる目的となる。このようなガバナンス(共治)を基盤として、マーケティング(誘致受入)の対象を細分化して絞り込み、リゾート市場において競合相手に勝るニセコの比較優位の位置取りを訴求し、これらに見合った方向でニセコ全体の受入環境の質の向上を図るとともに、その過程や成果を広報・宣伝し地域内外で情報を共有することにより、ニセコのブランドを形成する。これらの成果をもとに誘致活動を行い、ブランドの熟成に結びつける。(右図)

2)ガバナンス(共治)の主な機能

①ニセコ全体のグランドデザイン(将来像)を描き、進行管理する機能
 ニセコ全体の将来像を示すグランドデザインは、リゾートとしての開発と規制の方向性に関する原則を示すものであり、地域の価値を守るガバナンス(共治)が依拠する根拠となるものである。これまでその必要性が強く指摘されながらも、行政側からの進展がなかった経緯を総括し、早急に構築する必要がある。

②土地利用規制における五区分相互の隙間や重複を調整する機能
 土地利用五区分(都市、農地、森林、自然公園、自然環境保全)の各個別規制法間の整合性を確保するため、別途、北海道で作成済みの土地利用基本計画に加えて、土地利用調整基本計画(市町村)が必要となっている。五区分相互の隙間(ギャップ)により生じている「白地」や「重複」を調整する機能は、リゾート開発を適切に制御するためには不可欠であるものの、個別規制法だけでは難しいので、総合的な調整機能が求められる。
 そこで、ニセコ観光局は、五区分の規制等を直接担うのではなく、広域エリア全体の実態を把握し、それらの不十分なところについての調整指針を示し、規制を直接担う関係機関と協議調整することが適切と思われる。手法や制度設計についての先進事例を参考にしつつ、ニセコとしての独自制度を創出する。また、水資源や環境の保全、景観配慮など、土地利用に関連する領域のガバナンス(共治)も必要不可欠である。

※3:「土地利用基本計画を作ろう!」国土交通省2010 / 「水資源保全地域に係る指定の区域及び地域別指針」ニセコ町HP
③市場機構を管理する、行政による総合調整機能
 リゾート形成においては、投資や運営の面で民間が主体となりつつも、リゾート開発の管理やビジネスの管理、不動産取引等に関する管理、人材育成の管理、そしてブランドの管理(ブランド形成)においては、行政が責任を持って関与し、民間と協力しながらリゾート市場の質と量を管理するガバナンス(共治)が不可欠となる。これまで、この側面への行政関与が不十分であった経緯を総括し、適切な責任ある総合調整機能が求められる。具体的には、次の分野と指針を検討したい。※4:北村倫『知的資産創造』2008
 ●リゾート開発の管理
  ・リゾートエリアにおける適切な開発戦略の誘導と、関連するまちづくり計画の策定
  ・開発、建築、景観、環境、資源活用などに関する指針づくりの検討
  ・循環交通網や通信など不十分なリゾートインフラ整備の誘導
  ・除雪やゴミ処理、防災や防犯など、生活環境面の指針づくりの検討
  • ビジネスの管理
  • ホテルやコンドミニアム等客室数の適正供給量に関する検討
  • ・リゾート施設の最低限規模・水準に関する検討
  • ・ビジネス参入ライセンス制の必要性に関する検討
  • ・投資優遇制度と活用ルールに関する検討
  • 不動産取引の管理
  • 不動産取引の履歴記録と不動産所有者情報の整備
  • ・不動産取引による投機的地価高騰を抑制する仕組みに関する検討
  • 人材育成の管理
  • 観光関連の人材育成研修や人材採用面での共同プログラムの検討

  • その他関連する各種の調整機能

④リゾートエリアにおける活動の安全と自由の質を高める機能
 雪崩による事故を防止するための「ニセコルール」は、パウダースノーを満喫する自由と安全を両立させるための、極めてガバナンス(共治)的なシステムとして機能している。しかし、この機能は有志による多大な自主的活動の投入によって辛うじて維持されていることから、より安定的なシステムへの機能強化が望まれており、観光目的税の使途との関連も視野に収めつつ、ガバナンス(共治)機能の強化課題として検討する必要がある。

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